番組改編期は痛しかゆし
外国はどうだか知らないが、日本では三ヶ月をワンクールと称してその度ごとにテレビの番組内容が変わったり変わらなかったりする。その際によくマジックの特番が組まれて私は必ずチェックする。内容がよければ嬉しいが、そうでもないことがたびたびあるのでげんなりさせられる。よくないマジック番組とは主にタネアカシ番組のことである。最近はめっきり減ったのでよい傾向にある。ヴァレンチノというマジシャンが覆面をかぶり、マスクマジシャンと称してイリュージョンのトリックをばらしまくっていたが、だんだんネタが切れてきたのと視聴者たちがネタバラシの愚劣さにあきあきしてきたのでその手の番組は最近は見られなくなった。その次にされるようになったのは恐ろしいことに私がよく演ずるクロースアップマジックのタネアカシである。イリュージョンのタネアカシをしたあとは、観客の賞賛はマジシャンにではなく、アイデアの考案者に向けられる。だがクロースアップは主にマジシャンの訓練されたテクニックによって現象を起こすものなので、タネアカシをしたあとに観客の反応はマジシャンへの賞賛に変わることが多い。だからいいじゃないか、とみなが思ってしまうことが恐ろしい。そしてクロースアップマジックの名手たちがタネアカシをしていることが残念でならない。
「ドリームビジョン」というタイトルの特番が組まれたことがあった。この中でマジシャンのふじいあきらがマッスルパスやカードのパームなどをばらしていた。「ドリームビジョン2」ではムッシュ・ピエールが信じられないことに、マルチプル・シフト、フォールス・カットなどをばらしていた。この番組のコンセプトは最新の映像テクニックを用いた映像を見せるというものだ。超高速度撮影のできるカメラでマジックのトリックが暴けるかというのがそのコーナーでのテーマだった。だがこの映像自体がインチキきわまりない代物であった。普通の速度で撮影した映像と高速度撮影の映像とではカメラを設置する位置が違うのである。ふじいあきらのマッスルパスやカードのパームが移ったのは観客が見る位置とは違う角度から撮っていたのでトリックが映ったというだけの話だ。高速度撮影うんぬんはまったく関係がない。ムッシュ・ピエールのマルチプル・シフトにいたってはカードの扱い方を変えてしまっている。同じ角度から撮って撮影スピードを変えているのだが、それだけではトリックが映ることは絶対にない。多少角度を変えても映らない。だからピエールは普段なら絶対にやらないやり方をわざとやってカメラに映るようにしたのだ。そしてフォールス・カットなどをばらされたのでは、他のカーディシャンたちに多大な迷惑がかかるとういことくらい彼は十分に理解しているはずである。それなのにやってしまうのである。
こういったタネアカシが日本でもトップクラスの腕をもつマジシャンによってなされてしまうことが非常に残念である。ふじいあきらは芸能事務所に属しているので、事務所命令なら断れないのかもしれない。だがそれでもタネをばらしていいわけがない。ムッシュ・ピエールにいたっては、彼は店で働いて収入を得ることができているのである。いくらテレビ局に要求されたからといって断れないわけはあるまい。それでもピエールはテレビ出演により人気者になり、彼が出演している店、ヴァーノンズ・バーは連日大盛況らしいから、自分に都合がよければやってしまうのだろう。
MR.マリックもワンクールごとにタネアカシの特番に出演している。だんだんネタが尽きてきて、中身が薄くなっているように思う。最近は番組の後半にマジック対決を行っているので、タネアカシが少なくなっている。これはよいことであろう。
マジック番組を観るたびに、ああバラすなよと念じながら観ているのである。
